9R SPRING DRIVE MOVEMENT
Caliber 9R66
グランドセイコー初の9Rスプリングドライブムーブメント「キャリバー9R65」の完成からわずか2年後の2006年、スプリングドライブに初めてGMT機能を付加した「キャリバー9R66」が誕生しました。
GMTとは世界標準時(Greenwich Mean Time)の略称で、時針、分針、秒針の3本に加わる4本目の24時針(GMT針)によって、もう一つの時刻を表示できる機能です。
ムーブメント仕様
巻上げ方式 : 自動巻(手巻つき) 携帯精度 : 平均月差±15秒(日差±1秒相当) 持続時間(最大巻上時) : 約72時間(約3日間) 石数 : 30石 その他機能 : 日付表示機能、パワーリザーブ表示機能、24時針(デュアルタイム表示機能)9R Spring Drive
スプリングドライブは、機械式時計に用いられるぜんまいを動力源としながら、クオーツ式時計の制御システムである水晶振動子からの正確な信号によって精度を制御する、セイコー独自の駆動機構です。
機械式時計、クオーツ式時計の両者の良いところを取り入れたハイブリッド型エンジンを搭載したスプリングドライブは、「高精度を実現した機械式時計」でもあり、また「電池もモーターも使用しないクオーツ式時計」でもある、といえます。
メカとクオーツの
ハイブリッドなメカニズム
時計が動く仕組みにおける大きな要素は「動力」と「制御システム」にあります。
- 「動力」とは、時計を動かす力
- 「制御システム」とは、時計の動きをコントロールする仕組みです。
スプリングドライブは機械式時計の「動力:大きなトルク」に、クオーツ式時計の「制御システム : IC制御による高い精度」を採用した、ハイブリッド型のムーブメントです。
機械式腕時計
動力:ぜんまいトルク(時計を動かす力)が大きい
制御システム:一定のスピードで巻き上げられたぜんまいがほどけるように、「てんぷ」「がんぎ車」「アンクル」で構成される調速・脱進機構が、精度調整を行っています。高精度なグランドセイコーであっても日差+8~-1秒とクオーツ式時計に比べると、高精度が出し難い。
クオーツ式時計
動力:電池トルクが機械式時計に比べて小さい
水晶振動子に電圧をかけると規則正しく振動する性質を利用して、振動をIC回路が正確に検知し、歯車を1秒分動かします。ICの電気信号によって精度調整しているため、グランドセイコーであれば年差±10秒という高精度が可能です。
MECHANISM
「動力」は機械式時計に用いられる「ぜんまい」
スプリングドライブの動力は、機械式時計に用いられる「ぜんまい」で、電池やモーターに頼らない自己完結型の駆動システムです。
りゅうずを巻くとぜんまいが巻き上がり、ぜんまいのほどけようとする力が、歯車に伝わり、歯車に付いている針を動かします。
スプリングドライブが、グランドセイコーらしい太くて重い針を回すことができるのは、トルクの大きいぜんまい(モーターなどではなく)を利用しているためです。
MECHANISM
「制御システム」は
「トライシンクロレギュレーター」
スプリングドライブの制御システムは、クオーツ式時計に用いられるIC・水晶振動子の電気信号を利用した独自の調速機構です。
ぜんまい仕掛けのおもちゃを想像してみてください。
ほどける速度を調整しなければ、ぜんまいは一気にほどけてしまい、おもちゃは止まってしまいます。そのためほどける速度を一定に保つ仕掛けが必要となるのです。
スプリングドライブのために開発された「トライシンクロレギュレーター」が、その役割を果たしています。
トライシンクロレギュレーター( TRI【3つの】-SYNCHRO【同調させる】REGULATOR【調速機】)のTRI(3つの)とは
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1.機械的な力(動力:ぜんまい)
ぜんまいのほどける力で発電
例えば自転車のライトはタイヤを回す力を利用して発光します。
スプリンドライブは同じ原理を利用して電力を発生させており、ローターとコイルが巻かれた「ステータ」が発動機の役割を担っています。 ローターが1秒間に8回転することで、わずかな電気エネルギーが発生します。 -
2.電気信号(正確な信号:IC・水晶振動子)
水晶振動子が正確な信号を発信
わずかな電気を利用して、水晶振動子とICを動かします。
水晶振動子に電力が伝わることで、クオーツと同等の一秒間に32,768Hzという正確な信号をICに発信します。 -
3.磁力(ブレーキ:ローター・ステータ )
ローターにブレーキをかけて調速
ICは水晶振動子からの正確な信号とローターの回転速度を比較し、ローターが速くなり過ぎないよう断続的に磁力のブレーキをかけて、一定の速度に保ちます。ローターの回転が一定に保たれることで、ローター、歯車、針の順に制御された動きを伝え、正確な時を刻んでいます。
CRAFTSMANSHIP
の技による組立・調整
機械式時計とクオーツ式時計の利点を掛け合わせたスプリングドライブ。その組み立ては、3針モデルで200部品以上、スプリングドライブクロノグラフに至っては400部品以上と複雑を極めます。
必要な箇所に最適な油を注ぐ注油作業は、自動巻スプリングドライブで約80ヶ所、クロノグラフでは約140ヶ所もあります。
時計の設計図は0.01mm単位で記されており、最終的に部品を0.01mm以下の単位で加工・調整していくのは、ロボットでもコンピューターでもなく、人間の目と手なのです。
卓越した匠の技を持つ時計職人の存在が、高精度なスプリングドライブを生み出しています。
TECHNOLOGY
時の流れをうつし出す秒針
スプリングドライブの特徴のひとつが秒針の動きです。
クオーツ式時計のような一秒ずつのステップ運針でもなければ、機械式時計のような細かく刻むビート運針でもない、音もなくダイヤルの上をすべるスイープ運針です。
スプリングドライブは、ICで制御するローター(機械式時計のてんぷにあたる部分)が往復運動ではなく一方向への回転を続けることで、自然で流れるような針の動きが生み出されます。安定した精度を実現する独自の調速機工「トライシンクロレギュレーター」が、この滑らかな針の動きを生み出しているのです。
TECHNOLOGY
長く太い針
モーターで動くクオーツ式時計は、高精度ながらもトルクが小さいため、太い針を動かすことは困難です。
一方、ぜんまいを動力源とする機械式時計は、精度こそクオーツに劣るものの、トルクが大きく太い針を回すのに適しています。
クオーツ式時計の高制度と機械式時計の大トルクを両立させたスプリングドライブだからこそ、グランドセイコーらしい長くて太い針を正確に動かすことができるのです。
TECHNOLOGY
クオーツ並みの高精度
月差±15秒以内
クオーツの水晶振動子には、温度変化に弱いという問題がありました。
スプリングドライブはぜんまい駆動の時計でありながら、時間基準はクオーツ式時計に搭載される水晶振動子を利用しているため、クオーツと同等の高精度(平均月差±15秒、日差±1秒相当)をお約束することができるのです。
キャリパー9R01、9R96、9R16、9R15のように、平均月差±10秒(日債±0.5秒相当)と、さらに精度を追求した9Rスプリングドライブも登場しています。
TECHNOLOGY
72時間パワーリザーブ
スプリングドライブは、フル充電から放電までの駆動時間が72時間と、世界でも屈指のロングライフを誇っています。世界的には、標準は50時間です。
グランドセイコー開発陣は考えました。
土日がお休みであることが多い日本のビジネスマンが、金曜日の夜20時に帰宅して時計を外し、よく月曜日の朝8時に再び腕時計を付けるまでの時間を考えたとき、60時間になります。つまり、50時間駆動であれば、月曜日の朝に時計は止まっていて、時刻調整が必要になります。
なんとしても駆動時間は72時間まで伸ばすべきだと考えた開発陣は、ぜんまいの材質を一から作り直し、苦労の末にこのパワーリザーブを手に入れたのです。
TECHNOLOGY
LED電球のおよそ3億分の1
「超低電力駆動IC」
消費電力を抑えるために採用されたのは、IC基盤をシリコンで覆うSOI(シリコン・オン・インシュレーター)という製法です。
キネティック、ソーラーなどに使用されるICの低電力化を図ったノウハウを活かして作られた低電力駆動ICの消費電力は、LED電球のおよそ3億分の1.
クオーツ式時計に使用されるICの技術革新による低電力化によって、72時間パワーリザーブを実現しています。
TECHNOLOGY
効率よい発電を支える「コイル」
厳選されたコイルコア材と、独自の巻き線技術を活かした25,000回という膨大な巻き数のコイル線が、極めて高効率な発電を支えています。